最近キーボード、正確にはキースイッチを刷新してみました。 最初の動機は通常のタクタイルスイッチから静音リニアスイッチに変更することだったのですが、加えてスイッチの種類を複数変更して配置することで、押下する指毎にスイッチを変えてみました。
使っているキーボードについて
2020年初頭からKeyboardio Atreusを愛用していまして、そのモバイル性を活かして自宅だけでなくオフィスや出張先など、どこでも利用しています。
昔からキースイッチとしてCherryMXの茶軸が好きで、Atreusも当初はKailhの茶軸で組んでいました。 そのため心地よい打鍵音がするのですが、一方で携帯してどこでも利用するようになると、出先や会議室などでは音が気になるようになりました。
そこで、より汎用的に利用できるようにするべく、静音キースイッチに変更してみることにしました。
キースイッチの選定
キースイッチは触ってみなければわかりませんので、遊舎工房へ行ってテスターを端から試してみました。
以下は今回選択したスイッチとそれぞれの個人的な感想です。
WS Silent Linear
フィーリングでメインとして選んだのがWuque StudioのWS Silent Linearでした。
WS Switch Series - WS Silent Linear 35pcs
Wuque Studioはあまり聞いたことのないメーカーでしたが、About Usによると2020年に設立されたばかりの比較的新しいカスタムキーボードのデザインファクトリーのようです。
Ikki68やAquaといったキーボードが代表的なプロダクトで、遊舎工房でも取り扱いがあったようでした(2023年4月現在は完売)。 またMeletrixという子ブランドも展開しているようで、そちらからはZoom65などのプロダクトも流通しているようです。
使用感
完全にフィーリングですが、押したときの感じが長年利用していた茶軸に近い気がしたので購入しました。 リニアなのでタクタイル特有の押し込む感じはもちろんないのですが、63.5gという強めの押下圧によってしっかりとした打鍵感があるように思います。
音は個人的に満足できる静かさです。静音スイッチはものによっては底打ち音がするものもありましたが、WS Silent Linearはそういった音はしません。 ただよく聞くと押下時にスリスリとプラスチックが擦れるような音がするようなので、気になる人はいるかもしれません。自分としては問題ないレベルだと思います。
実際に装着してわかったのは、キーキャップの装着感が少し緩いことです。 他のキーキャップでどうなのかはわかりませんが、自分が利用しているTEX ADAキーキャップではほぼ乗せているだけ、くらいの締まり具合でした。 ただぐらついたりといったことはないので、実際の使用上で問題はありませんでした。
また販売が35pcs固定なため、40%キーボードの自分からすると数がかなり中途半端でした。1セットでは9pcs足りないし、2セットでは多すぎる数です。 仕方ないのでまず1セット購入してみて、よさそうであれば残りの9pcs分を他のスイッチで補うことにしました。
Durock Silent Linear Dolphin
こちらも個人のフィーリングですが、WS Silent Linearに非常に近い使用感だったのが、Durock Dolphinです。
トラベルや押下圧の公称値も非常に近いですが、実際の押下感はWS Silent Linearより若干重く感じます。 ただ非常に微妙な違いです。公称値では押下圧は62gfとWS Silent Linearより小さいですが、重く感じるので不思議です。 静音機構やストローク、ハウジング素材が違っている影響なのかもしれません。
重さ以外では、Dolphinの方がスイッチを押した感がしっかりあるように思います。 WS Silent Linearは底打ちしたときの打鍵感がやわらかい感触があり、Dolphinの方が硬質感があります。 あえて好みでいえば、この点はDolphinの方が好みと言えそうですが、非常に微妙な違いなので使用感にそれ程の影響はなさそうです。
静音性はかなりよいです。WS Silent Linearと変わらない印象です。 Durock Dolphinの方が以前から出回っていますので、WS Silent Linearの特性がDurock Dolphinに近い、というほうが正しいかもしれません。 こちらもよく聞くと押下時にバネ音なのか少しジャリっとした音がするにはしますが、十分に静かだと感じます。
ただひとつ当たり99円と比較的高額なスイッチなので、大量購入するにはちょっと勇気のいる商品だと思います。 値段を考慮すると、Durock Dolphinが気に入っているけどちょっと高いな、と感じている人にWS Silent Linearが安価な代替になるように思います。
今回はWS Silent Linearの補填なので、10pcs程度の購入で済ませています。(実際には8pcsの利用)
Kailh Midnight Silent V2 Switch / Linear
補填だけなら上記の2種類で足りているのですが、せっかくなので押下する指毎にキースイッチの押下圧を変えてみることにしました。 主に小指まわりの力をかけにくい配置のキーに利用するために選んだのが、遊舎工房さんの月間ランキング入りしていたKailh Midnight Silent V2です。
Kailh Midnight Silent V2 Switch / Linear
このスイッチは上の2つに比べて押下圧が低めの40gf程度となっており、公称値からして大きく違うため明らかに軽いタッチになっています。
軽いといっても40±10gfなので、赤軸などに比べれば十分な押下圧があります。 また他の2つに比べると打鍵感がかなりよいです。 こちらをメインにして組んでもまったく問題ないと思うくらいには、打っていて気持ちのいいスイッチです。
静音性はありますが、戻り時にスコスコという小気味よい音がします。 個人的には好みの音なのですが、静音性という意味では上の2つより若干劣っている感じはします。 そのため静音性の高さを求めると、個人的にはちょっと気になるかなという感触はあります。
ひとつ71円と比較的安価で手を出しやすいお値段になっています。 こちらも左右の小指に近い配置用に10pcs用意しました。
キースイッチのレイアウト
上記3種類のキースイッチを用意し、WS Silent Linearをメインに、部分的に他の2種類を配置しました。
配置の方針は以下のようにしています。
- ホームポジションの人指し指、中指および親指は重めのDurock Dolphin (青枠)
- 小指および薬指のホームポジションから遠い配置はKailh Midnight Silent V2 (灰枠)
- それ以外はWS Silent Linear (無枠)
L や S など薬指のホームポジションキーについては薬指自体がそれほど力の入る指ではないため、Dolphinではなくしました。 また FUN や SHIFT など親指でも若干打ち難い位置についても、DolphinではなくWS Silent Linearにしています。
(注:自分のキーレイアウトは変更しているので、この図とは違います^^;)
まとめ
愛用のKeyboardio Atreusで、キースイッチの静音化と押下する指毎にスイッチの押下圧を変えて変荷重レイアウトにしてみました。
どのスイッチも個人的には満足していますので、今のところ長く使っていけると思っています。 今回最近登場したばかりのWS Silientキースイッチを利用してみましたが、中々のコスパスイッチという印象です。
また、押下圧を変更した小指回りのスイッチ配置は、結果としてやってみてよかったと思っています。 少なくとも力のかかり方が実際に違うので、そのあたりの「楽さ」は確実にあります。それだけでもやった価値がありました。
最近はRealforceから変荷重の商品が出ていたりするので、効果と需要はそれなりにあるのかもしれません。
特に東プレ独自の変荷重キースイッチのモデルは、各指の押す力の強さに合わせてそれぞれのキーを押しやすいように、人差し指で押すキーを 45g、小指で押すキーを 30g とキー荷重を変えて配置しており、書類作成やメール、テキストチャット、プログラミングなどキーボードを毎日打つ方に最適なキー荷重です。
特徴 | REALFORCE | 日本製プレミアムキーボードの最高峰より引用
最後に今回HotSwapが大活躍してくれました。 実際に何年か使っていく中で、キースイッチを自由に変更できるのはHotSwapの面目躍如です。
Atreusは個人的に一生使ってもいいくらい気に入っている商品なので、基盤以外のパーツが変更できるというのは本当に大事な機能だと思っていて、 今回その効果を実感することができました。